以下は、大学生・専門学校生など“学生バイト”としても働く機会の多いみなさんに向けて、2025年改正で大きな注目を集める「103万円の壁」を含む年収の“壁”と、扶養控除・勤労学生控除・社会保険の扶養など、ややこしい制度をわかりやすく解説した記事です。
はじめに
「アルバイトで稼ぎたい」「でも親の扶養から外れたらどうなるんだろう」「学生だから働いていいの?税金は?保険は?」――。こうした疑問を持つ学生は多いと思います。実際、世の中では「103万円の壁」「130万円の壁」「150万円の壁」など“年収の壁”と呼ばれる数字がささやかれてきました。
ところが、2025年(令和7年)からは、この「壁」が大きく動き、学生にも影響が出る制度改正が行われています。
この改正を把握しておくと、「いくらまで働いても大丈夫?」「親の扶養に入っているとどうなる?」「年末調整どう書くの?」といった不安を減らし、安心して働けます。
この記事では、制度の背景から「何がどう変わるのか」「学生として気をつけるポイント」「実際に働くときのチェックリスト」まで、学生視点で整理していきます。
1.まず「扶養」「控除」「社会保険」の基本を理解しよう
制度を理解するためには、まず「扶養」「控除」「社会保険の被扶養」のそれぞれがどういう意味かを押さえておくことが大切です。
簡単に整理しましょう。
「扶養」という言葉の意味
「扶養」とは、簡単に言えば「ある人が別の人を経済的に支えている(=生計を一にしている)状態」です。親が子を扶養している、などが典型例です。制度的には、この扶養によって税金や保険料の負担が軽くなる仕組みがあります。
ただし、ここで注意が必要なのは、「扶養」には少なくとも2種類の制度的な意味合いがあるという点です。
- 税制上の扶養
親が子を扶養していると、親の所得税・住民税の計算上「扶養控除」が受けられたりします。つまり、親の課税所得が少なくなれば税金が下がるというメリットがあります。
この扶養には「扶養親族」「特定扶養親族」「老人扶養親族」など区分があります。例えば、19歳~23歳未満の子どもは「特定扶養親族」になることがあります。
制度上、子どもの所得・年収が一定の金額を超えると、親がその子を扶養親族として控除を受けられなくなってしまう――これが「年収の壁」と言われる所以です。 - 社会保険上の被扶養(健康保険・厚生年金)
親が加入している健康保険(たとえば会社の健康保険)に、子どもが「被扶養者」として入ることができる制度があります。被扶養者になると、子自身が保険料を払わずにその健康保険の対象になれたり、年金保険料を自分で払わないで済むケースがあったりします(ケースによる)。
ただし、「被扶養者」として認められるためには、子どもの年収や就労状態など一定の“要件”があります。これも「年収の壁」で語られてきた理由です。
このように、「扶養」という言葉は、税金の世界と社会保険の世界で少し異なる制度を指しています。学生としてバイトをする際には、どちらの“壁”が自分に関係するかを意識しておくことが重要です。
「控除」とは
「控除」とは、税金を計算する際に「収入から引いていい金額(=所得を軽くする金額)」のことです。控除が多ければ多いほど、課税対象となる所得が小さくなるため、支払う税金が少なくなります。
学生・アルバイトの皆さんに関係が深い控除としては:
- 基礎控除
- 扶養控除(親が扶養している場合)
- 勤労学生控除(学生本人がアルバイトをしている場合)
などがあります。
学生として働く際に特に意識すべき制度
特に学生でアルバイトをしている場合、次のようなポイントがあります。
- 自分(学生)がどれくらい収入を得てもよいか(=親の扶養や自分の税金・保険にどう影響するか)
- 親の扶養に入っているかどうか(=親が控除を受けているかどうか、自分が被扶養者かどうか)
- 勤労学生控除を受けられるかどうか(学生本人が制度を使えるか)
- 社会保険(健康保険、年金)の被扶養の条件に入っているか/外れてしまうか
- 年末調整・確定申告でどの書類をどう提出すればよいか
このような制度を知っておけば、「アルバイトで稼ごうと思ったら思った以上に税金・保険料・親の扶養に影響が出ていた!」ということを避けられます。
2.「103万円の壁」とは何だったのか
「103万円の壁」という言葉、聞いたことがある人も多いと思います。これまで、学生アルバイト/パートで働く人が注意してきた年収のラインです。ここでは、これまでこの壁がどういう制度的意味を持っていたのかを振り返ります。
なぜ「103万円」だったのか
これまで次のような仕組みがあって、「給与収入103万円」を目安に働く人が多かったのです。
- 給与所得控除(給与収入から自動的に「控除」される金額)や基礎控除などをあわせると、給与収入が103万円以下なら所得税がかからないケースが多かった。
- 親の扶養親族として控除を受けられるためには、扶養される人(子ども)の合計所得金額が48万円以下、かつ給与収入で言えば一定以下という条件があり、結果的に「給与収入103万円」が一つの目安になってきました。
- 社会保険の被扶養者になるためにも、年収100万円台前半という目安があり、「扶養のままでいられるかどうか」という観点でも注目されていました。
このように、「103万円」の数字は親の扶養控除・学生本人の課税・被扶養者状態の3つの制度が絡み合った“壁”として、特にパート・学生アルバイトの間で広く語られてきました。
学生にとっての“壁”の意味
学生がアルバイト収入を得る際、このような流れで意識してきた人も多いでしょう。
- アルバイトで年間103万円を超えてしまうと、親の扶養控除が消えるかも/あるいは学生本人に所得税がかかるかも。
- 被扶養者として親の健康保険に入れていた子どもが、年収が一定を超えてしまうと自分で保険料を払うことになるかも。
- だから、「年収103万円まで」という目安で働く/働く時間を調整する、というケースがあった。
つまり、学生が「働きたいけどあんまり稼ぎすぎると扶養外れちゃう?」と考えていた“壁”が103万円だったわけです。
3.2025年改正――“103万円の壁”を含めた年収の壁がどう変わる?
さて、2025年(令和7年)からこの「壁」が大きく動きます。学生としてアルバイトをする際には、この改正をちゃんと押さえておくことが重要です。以下、主な改正ポイントと学生向けの影響を整理します。
主な改正ポイント
改正点は複数あり、税制・社会保険・控除などあらゆる面で影響があります。主なポイントを挙げましょう。
- 基礎控除額の引き上げ:合計所得金額2,350万円以下の方は、基礎控除が48万円から58万円に引き上げられました。 (株式会社BOD|全てのお客様に最適なアウトソーシングを。)
- 給与所得控除の最低額の引き上げ:給与収入190万円以下の範囲で、給与所得控除が55万円→65万円に。 (株式会社BOD|全てのお客様に最適なアウトソーシングを。)
- 扶養親族・同一生計配偶者などの「合計所得金額」の要件が変更。具体的には、扶養親族(税制上)になるための所得金額の上限が、従来の48万円から58万円に。 (すすむ・はかどる、契約学習「契約ウォッチ」)
- 学生(19歳以上23歳未満の子)を扶養する親に対して、「特定親族特別控除」が新設され、子の年収要件が拡大されました。 (一般社団法人 公的保険アドバイザー協会)
- 所得税非課税となる“壁”(給与収入で言えば何万円まで働いても税金かからないか)も、改正により“103万円”から“160万円”あたりに引き上がるという整理もあります。 (トウシル 楽天証券の投資情報メディア)
このように、制度の“境界線”が上方向に動いており、「もう少し働いても大丈夫」な余地が増えてきたとも言えます。ただし、改正内容は制度ごとに異なり、学生・親・アルバイト先それぞれの立場で注意点があります。
学生として押さえておきたい“年収の壁”ライン
学生がアルバイトをする際に知っておくとよい“年収の目安ライン”を、改正後の状況も踏まえて整理します。なお、実際には“収入”か“所得”か、“給与収入”か“合計所得金額”かで区別されるため、ざっくりの目安として理解してください。
| ライン名 | 概要 | 学生にとっての意味 |
|---|---|---|
| 税制上の扶養親族の年収要件(一般) | 従来:給与収入103万円あたりが目安。改正後:給与収入(給与所得ベース)で「123万円」あたりまで扶養親族として控除対象となる範囲が広がりました。 (hrpro.co.jp) | 親があなたを扶養親族として控除できるかどうか、ひとつの目安。学生もこの範囲内で働けると“親の控除OK”となる可能性。 |
| 税制上:19歳~23歳未満の子(特定扶養親族)向け | 改正後、新設された「特定親族特別控除」によって、子どもの年収が150万円までであっても、親が控除を受けられる対象になりました。 (東洋経済オンライン) | 大学生など、年齢が“19〜23歳未満”の学生であれば、この範囲であれば“もう少し稼いでも大丈夫”という意味。 |
| 学生本人の所得税非課税ライン | 従来、給与収入103万円あたりまでなら所得税がかからないケースが多かった。改正後、給与収入160万円あたり(給与所得控除+基礎控除をあわせた目安)まで非課税の可能性が出てきました。 (トウシル 楽天証券の投資情報メディア) | 学生自身が「自分に所得税がかかるかどうか」を気にするなら、この目安を知っておくと安心。 |
| 社会保険上の被扶養者要件(学生・子ども) | 学生でも、親の健康保険で被扶養者になれるかどうか、年収要件・年齢要件などがあります。改正で19歳~23歳未満の子どもについては年収150万円未満を目安にして、被扶養者扱いを維持できる可能性が出てきました。 (一般社団法人 公的保険アドバイザー協会) | アルバイトで年収が大きくなってきた場合、「親の保険で入っていたけど外れる」という事態を防ぐためにチェックが必要。 |
学生向け「150万円の壁」と言われるもの
特に学生・親子世帯で注目なのが、「年収150万円の壁」です。改正によって、19歳~23歳未満の子どもを扶養する親に対して、子ども年収が150万円未満なら控除を受けられるという枠ができたためです。 (一般社団法人 公的保険アドバイザー協会)
つまり、「学生バイトとして少し多めに働きたい」人にとって、150万円あたりがひとつの新たな目安になってきています。
ただし、これはあくまで“税制上の扶養控除”の話であって、社会保険上の被扶養・学生本人の課税など別の制度では別の“壁”があるため、過信は禁物です。
4.学生に関わる制度をひとつずつ丁寧に解説
では、学生アルバイトとして働くみなさんが押さえておくべき制度を、項目ごとにわかりやすく掘り下げます。
4-1 勤労学生控除(学生本人の控除)
まず、学生本人が「アルバイトをしているなら使えるかも」という控除制度として、勤労学生控除があります。
どういう制度?
勤労学生控除とは、学生本人が働いて得た給与所得等がある場合に、一定の要件を満たせば所得金額から控除を受けられるという制度です。つまり、「学生として勉強もしながらアルバイトしている人」を支援する趣旨です。
<主な要件(2025年改正後)>
- 勤労による所得があること(アルバイトによる給与所得など) (バックオフィスの業務効率化なら「マネーフォワード クラウド」)
- 合計所得金額が一定以下であること(2025年からは85万円以下) (バックオフィスの業務効率化なら「マネーフォワード クラウド」)
- 学生であること(学校教育法に定める学校に在籍など) (バックオフィスの業務効率化なら「マネーフォワード クラウド」)
- 勤労以外の所得(雑所得など)が10万円以下であること。 (バックオフィスの業務効率化なら「マネーフォワード クラウド」)
学生バイトが使えるかどうかのチェックポイント
- アルバイトの給与収入が「給与所得控除額+勤労学生控除額」を差し引いて、所得金額(課税対象になる部分)が85万円以下かどうか。例えば、給与収入が150万円なら給与所得控除65万円(2025年以降の値)を差し引くと所得90万円なので、この控除要件を超える可能性があります。
- 勤労学生控除を受ける場合、勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」などで「勤労学生」に該当する旨を記載する必要があります。 (バックオフィスの業務効率化なら「マネーフォワード クラウド」)
- 学校の在籍状況(通学しているかどうか)を確認しておく。アルバイトだけでなく「学生である」という条件を満たしていることが前提です。
学生本人にとってのメリット
- 所得控除が受けられるため、所得税・住民税の負担が軽減される可能性があります。
- アルバイト収入が多少増えても、“控除を使える範囲”が広がることで、少し安心して働けるようになった面があります。
注意すべき点
- この控除を使える/使えないで親の扶養控除や社会保険の被扶養の要件とは別に影響します。つまり「勤労学生控除を受けて大丈夫=親の扶養に自動的に入れる」というわけではありません。
- 年収(給与収入)だけではなく、給与所得控除・基礎控除などを差し引いた“所得金額”の考え方を理解しておく必要があります。
- アルバイトを複数掛け持ちしている場合には、収入合計で要件を超えてしまう可能性があります。
4-2 税制上の扶養控除(親が学生を扶養する場合)
次に、学生を扶養する側(たとえば親)が控除を受けられる制度について、「扶養親族控除」「特定扶養親族控除」「特定親族特別控除」などがあります。
制度の概要
親が子(学生)を扶養親族としていると、親の所得税・住民税の計算上「扶養控除」を受けることができます。対象となる子どもの年齢・所得・同一生計かどうかなどの要件があります。 (株式会社BOD|全てのお客様に最適なアウトソーシングを。)
例えば、19歳以上23歳未満の子は“特定扶養親族”として、より大きな控除対象になるケースがありました。 (東洋経済オンライン)
2025年改正での主な変化
- 子ども(19歳~23歳未満)が扶養親族となるための年収(もしくは給与収入)の上限が引き上げられました(150万円あたりまで収入を得ても親の控除対象となる可能性あり)という改正があります。 (一般社団法人 公的保険アドバイザー協会)
- それに伴い、「控除を受けられなくなる壁」が従来の103万円あたりから“もう少し高いレベル”へと変わりつつあります。 (NRI)
学生・親双方にとっての影響
- 学生側から見ると「少し多めに働いても、親の扶養から外れにくくなった」という安心材料になります。
- 親側から見ると「子どもがアルバイトで稼ぎすぎて控除が消えてしまった……」というリスクが少し減る可能性があります。
- ただし、控除の対象となるには「同一生計」「扶養されている」などの要件もありますので、収入だけで安心せず、状況を確認することが大切です。
注意すべき“壁”の具体的イメージ
例えば、改正後は子どもの年収(給与収入ベース)がおよそ150万円あたりまでなら、親の控除対象となる可能性が出てきたという整理があります。 (東洋経済オンライン)
ただし「〜150万円まで完全に安心」というわけではなく、150万円を超えたら段階的に控除額が減るという仕組みになっていたり、別の要件があったりします。 (hrpro.co.jp)
4-3 社会保険の被扶養者(親の健康保険・年金)としての学生
学生がアルバイトをしていると、「親の健康保険(会社の健康保険など)に被扶養者として入っていたけど、自分の収入が増えて外れちゃった…」という話もあります。ここではその制度を整理します。
被扶養者とは?
親が加入している健康保険や年金制度で、子どもが一定の所得・年収以下であれば「被扶養者」として扱われ、自分で保険料を払わずにその制度の対象となることができます。
これによって、学生本人が保険料を払わずに済むケースもあります。
年収・要件の例
被扶養者となるための年収・就労時間などの要件は制度・保険組合によって異なりますが、例えば「年収130万円未満」「年間収入100万円台前半」という目安があったことが多いです。 (NRI)
2025年改正では、学生(19歳~23歳未満)について、年収150万円未満を目安に被扶養者扱いを維持できるという整理が出ています。 (一般社団法人 公的保険アドバイザー協会)
学生としてチェックすべきポイント
- アルバイト契約・就労時間・収入見込みを把握しておく。たとえば「去年の年収+今年の見込み」が被扶養の年収要件を超えると、被扶養から外れる可能性があります。
- 残業代・交通費なども収入に含まれるかどうか、加入している保険組合・会社の規定で確認すること。 (一般社団法人 公的保険アドバイザー協会)
- 年途中でアルバイトを始めた場合、「年間見込み収入」が重要です。被扶養者としての認定時期(たとえば12月31日時点での年齢・収入見込み)もチェックが必要です。
- 被扶養から外れた場合、自分で国民健康保険に切り替える/年金保険料を払う必要が出ることがあります。学生のうちは負担が思わぬところで出る可能性があります。
4-4 年末調整・確定申告・アルバイト先の書類対応
学生としてアルバイトをしていると、「年末調整って何?」「バイト先で何を出さなきゃいけないの?」という疑問も出ると思います。改正を踏まえてポイントをおさえておきましょう。
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出
アルバイト先で給与を受ける際に、勤務先から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出を求められることがあります。学生であっても、扶養控除・勤労学生控除・被扶養者かどうかなどを勤務先に伝えるためにはこの書類が重要です。 (バックオフィスの業務効率化なら「マネーフォワード クラウド」)
学生として特に気をつけたいのは「勤労学生」に該当するかどうか、書類の「勤労学生」の欄をチェックするかどうか、また「扶養親族」に親の扶養下である子どもとして記載されているかどうかなどです。
年末調整・確定申告
- 年末調整:アルバイト先が年内に支払った給与等を基に、控除の適用などをして税金を調整する制度です。学生でも年末調整を受けられる場合があります。
- 確定申告:アルバイト収入が多数あったり、掛け持ちをしていたり、年の途中で状況が変わったりした場合、学生本人で確定申告が必要になることもあります。
- 改正後は「給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書」など、提出書類が見直されているという案内もあります。 (トウシル 楽天証券の投資情報メディア)
学生バイトとしての書類対応のポイント
- アルバイトを始めたら、まず勤務先で提出書類が何か確認する(扶養控除申告書、勤労学生欄など)
- 年収(給与収入)見込みを早めに把握しておく。特に掛け持ちバイトや残業代・交通費を含めると“思った以上に”稼いでしまう可能性あり。
- 親の扶養に入っている場合、親側・自分側で「この収入なら扶養のままでいけるのか」「被扶養から外れないか」を家族で話しておく。
- 学校の休み・就活・インターン・長期アルバイトなどで収入変動がある年は、“年の途中で見込み収入を年換算”して考える。
- 奨学金・仕送り・アルバイト収入以外の所得(雑所得)などもあると、控除要件や被扶養要件に影響を及ぼす可能性があるので、学校やアルバイト先で確認を。
5.学生の皆さんへ――「どう働けば安心?」アルバイト戦略
学生として「勉強もしつつ、アルバイトもして、少しでも収入を得たい」という人は多いはず。ここでは、制度を踏まえて「働き方のヒント」「安心して稼ぐためのポイント」をお伝えします。
働き方のヒント
- 年収見込みを早めに試算しよう:例えば、月○時間×時給○円+長期休暇中のボーナス収入…などを見て「今年このくらい稼げそう」という見込みを立てておく。
- 残業・交通費・ボーナス・掛け持ちバイトを侮るなかれ:残業代や交通費、複数バイトの合算で“年収”が想定以上になるケースがあります。特に学生は「休み中に集中して働く」ことが多いため、年収100万円台後半や150万円に近づく可能性があります。
- 「親の扶養にいて安心」だけで働きすぎないように:親の扶養や自分の被扶養の条件を超えると、思わぬ税・保険の負担が出る可能性があります。
- 学業とのバランスを忘れずに:稼ぐことも大事ですが、学生生活・就職活動・免許取得・インターン経験など“将来”に向けた活動も同じくらい大切です。制度を知ることで、「無理なく働く範囲」を設けることができます。
- 年の途中で働き方が変わることも想定しておこう:たとえば、夏休みに長時間バイトをする、就活で短期集中バイトをする、長期休暇に帰省して地元で働くなど“変動”がある年は、年間で見た収入の“見込み”を多めに見ておいたほうが安全です。
安心して稼ぐためのチェックリスト
学生の皆さんがアルバイトを始める/継続する際に、「この収入なら大丈夫?」と自分でチェックできるように、以下のリストを参考にしてください。
- アルバイトの年間収入(給与収入ベース)をざっと見積もっているか?
- 複数バイトをしているなら、合算した収入を想定しているか?
- 残業・深夜手当・交通費・ボーナスがあるなら、それも含めているか?
- 親の扶養に入っているなら、自分の収入が扶養の要件を超えていないか/超える可能性がないかを親と話したか?
- 自分が学生として「勤労学生控除」を受けられそうか/受けるための要件(所得の上限など)をクリアできそうか?
- 親の健康保険の“被扶養者”として入っているなら、自分の収入が年収150万円あたりの目安を超えないか、保険組合の基準を確認したか?
- 年末調整・書類提出(扶養控除申告書など)はアルバイト先で正しく対応してもらえるか確認したか?
- 学業・就活・長期休みなどの変化があった年なら、収入変動に備えて余裕を持って働き方を考えているか?
どういう働き方が「安心ライン」?
例えば、学生としてアルバイトをするなら次のようなモデルが考えられます。
- 月10万円 × 8か月(学期中毎月)+夏休み月20万円 ×2か月 = 年間収入おおよそ180万円
→ このモデルでは150万円を大きく超えてくるため、「扶養のままでいられるか」「被扶養を維持できるか」「自分に税金がかかるか」をちゃんと確認すべきラインです。 - 月8万円 × 8か月+夏休み15万円 ×2か月 = 年間おおよそ114万円
→ このモデルなら、比較的“安心”と言えるライン。親の扶養・勤労学生控除の範囲に入りやすい可能性があります。 - 掛け持ちバイトであったり、残業・深夜手当・長期インターン給与があったりする年は、“月平均”で考えるのではなく“年間見込み”を少し高めに見積もることが安全です。
6.学生のためのQ&A(よくある疑問)
ここで、学生アルバイトの皆さんから出やすい疑問をQ&A形式で整理します。
Q1.「年収103万円を超えたらもう働いちゃいけないの?」
A.いいえ。「もう働いちゃダメ」ということではありません。ただし、従来「年収103万円」あたりがひとつの目安となっていたのは、税制上・扶養上・保険上で“扶養の範囲”などがそのあたりにあったからです。2025年改正以降は、例えば税制上の扶養親族の年収要件が“給与収入123万円あたり”になったという整理もあります。 (hrpro.co.jp) しかし、制度は“全部安心”というわけではなく、学生として働く際には「自分の収入がどの制度にどう影響するか」を知っておくことが肝心です。
Q2.「150万円あたりまで稼いでも大丈夫って本当?」
A.はい、ある意味で「150万円あたりまでなら親の扶養控除などで影響が少なくなった」というのが改正の特徴です。19歳~23歳未満の子どもを扶養する親に対して、「子どもの年収150万円あたりまでなら控除対象となる可能性あり」という制度ができています。 (まき社会保険労務事務所 – 岡山市の社労士、まき社会保険労務士事務所) ただし、これは“税制上の扶養控除”の話であって、社会保険の被扶養者の要件、学生本人の勤労学生控除など別制度では別の壁があるため、「150万円稼いでも何もしなくてよい」ではなく、制度ごとにチェックが必要です。
Q3.「親の健康保険の扶養から外れたらどうなるの?」
A.もし学生本人の収入が保険組合の被扶養者要件を超えてしまったり、就労状況・年齢の条件で被扶養を外れたりした場合、自分自身で国民健康保険に加入したり、自分で年金保険料を払ったりする必要が出ることがあります。 2025年改正では、19歳~23歳未満の子どもの被扶養年収要件が150万円未満の目安という整理があります。 (一般社団法人 公的保険アドバイザー協会) 学生のうちは“被扶養で保険料がかからない”という安心感があることも多いので、アルバイトで収入が増えてきたら早めに確認を。
Q4.「書類(年末調整・扶養控除申告書)はどうすればいい?」
A.アルバイトをしているなら勤務先から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出するように案内されることがあります。学生の場合、「勤労学生」に該当するならその欄を記入し、「親の扶養親族」として記載されているかなども確認しましょう。 (バックオフィスの業務効率化なら「マネーフォワード クラウド」) また、改正により「特定親族特別控除」などの制度も設けられており、勤務先・年末調整の際に「給与所得者の特定親族特別控除申告書」などを提出する必要がある場合があります。 (トウシル 楽天証券の投資情報メディア)
Q5.「奨学金・仕送り・アルバイト以外の所得もあるんだけど、それも考えたほうがいい?」
A.はい。例えば、給付型奨学金・仕送り・副業・投資など、アルバイト収入以外に所得がある場合、それらも“合計所得金額”として制度の要件に関わってくる可能性があります。例えばある記事では「給付型奨学金が収入とみなされる可能性があり、134万円の壁」という話も出ています。 (一般社団法人 公的保険アドバイザー協会) 学生として働きながら他の収入もある場合、アルバイト収入だけで安心せず、「所得」という観点で全体を見ておくことが大切です。
7.まとめ:学生だからこそ「知っておいてほしい」制度とポイント
最後に、学生の皆さんに向けて「今日から実践できるポイント」を整理しておきましょう。
- アルバイトをする際には、年間の収入見込みを“ざっくりでも”把握しておくこと。月収×月数+ボーナス・残業などを考慮しよう。
- 2025年改正で“103万円の壁”などの数字が変わってきています。「少し多めに働いても大丈夫になった」という面がありますが、それでも「上限なし」というわけではありません。制度ごとに要件を確認しよう。
- 親の扶養に入っている・被扶養者になっている場合は、親子で「収入がどこまでなら扶養のままでいられるか」「被扶養のままでいられるか」を共有しておく。
- 勤労学生控除のように、学生本人が使える制度もあります。アルバイト収入を得るなら、このような控除も視野に入れて、勤務先で提出書類の要件を確認しよう。
- アルバイトだけでなく、奨学金・仕送り・インターン収入・副業なども含めて「所得・収入全体」を意識する。特に“年の途中で働き方・収入が変わる年”は注意が必要。
- 書類対応(扶養控除申告書、年末調整、勤務先との確認)を怠らない。学生だからこそ「アルバイト=気軽に」というわけではなく、制度の影響を受ける可能性があるからです。
- 何か収入・働き方を変える予定があるなら、早めに(アルバイト先・保険組合・学校)に確認しておくことで安心感が増します。
最後に
学生生活は、学び・友人・サークル・将来の準備といった大切な時間です。その中で「アルバイトをして少しでも稼ぐ」こともとても良い経験です。でも、同時に「学生だからこそ制度を知らずに損をしたくない」「親の扶養・保険・税金で困らせたくない」という思いもあるはず。
2025年の改正によって、「少し多めに働いても大丈夫」という余地ができた一方で、制度の内容はこれまで以上に少し複雑になっています。だからこそ、「自分の収入はどうか」「親の扶養や保険の状態はどうか」「控除を使えるかどうか」を今回の記事を参考に整理しておけば、安心して働ける選択肢が広がります。
もしよければ、次回は「アルバイト収入が年間いくらだったら住民税がかかる?」「奨学金・仕送りがあると年収の壁にどう影響する?」といった“学生ならではのケース”についても記事にできますが、いかがされますか?
